勘定科目「受取配当金」に該当する内容とは? 計上方法と仕訳例

企業が他法人の株式を保有している場合等には、配当金を受け取る機会があります。

そこでこの記事では、配当金を受け取った時に計上する収益科目である「受取配当金」について取り上げました。

「受取配当金」に該当する取引や該当しない取引、税務処理時の注意事項や計算方法等、受取配当金に関連してよく議論になる点についてご紹介します。

目次

「受取配当金」とはどんな勘定科目か? わかりやすく解説

企業が株主として受け取る配当金を収益として計上する勘定科目

受取配当金は、企業が事業活動の中で所有する株式によって、他法人から受け取る配当金を表す、法人特有の勘定科目です。受取利息と合わせて、「受取利息配当金」という勘定科目で処理されることもあり、損益計算書上では、「営業外収益」に区分されます。

また、配当金以外にも、信用金庫・信用組合等からの剰余金の分配や中間配当、投資信託の収益分配金、保険会社からの基金利息、建設利息の配当等を処理するときにも使われます。

なお、自社の株式からの配当金は利益として計上できませんのでご注意ください。

「受取配当金」に該当する内容をチェックしよう

受取配当金には、どのような内容の取引が区分されるのでしょうか。

まずは、受取配当金に該当する取引の内容をチェックしていきます。複数の取引があり、この後ご紹介する「該当しない」内容と混同しがちですが、ひとつひとつ押さえておきましょう。

受取配当金に該当する取引の具体例

  • 企業が、所有するその株式数に応じて、他法人(株式会社、合資会社、合名会社および合同会社、特定目的会社等)から受け取る利益の配当金
  • 信用金庫および信用組合等からの剰余金の分配
  • 株式投資信託における収益の配当(収益分配金)
  • 保険会社からの基金利息
  • 建設利息
  • 特別法人(中小企業協同組合、農業協同組合、漁業協同組合等)からの配当金、および一定の取引量があった時に発生する事業分量配当金

間違えやすい「受取配当金」に該当しない内容も確認しておこう

続いて、受取配当金に該当しない内容をご紹介します。紛らわしい取引がいくつか存在しますが、特に間違えやすい「保険の配当金」と「銀行の預金利息」について見ていきましょう。

間違えやすい内容1.保険の配当金

「保険の配当金」については、受取配当金(および受取利息)には該当しません。

保険の配当金とは、保険料の予定額と実際額との間の差によって剰余金が発生した場合に、剰余金の還元として契約者に分配される配当金のことを指します。勘定科目としては、「雑収入」で処理するのが妥当でしょう。

なお、雑収入で計上する保険の配当金の場合は、受取配当金とは税法上の取り扱いが異なります。後述する受取配当金の「益金不算入」の対象外となりますので、ご注意ください。

間違えやすい内容2.銀行の預金利息

企業が銀行の普通預金および定期預金を利用している場合は、預金利息が発生します。この預金利息については、「受取利息」勘定で処理します。

金融収益の割合が高い会社等の例外はありますが、受取利息については、原則「営業外収益」として損益計算書へ計上されます。

なお、企業によっては、受取利息と受取配当金をあわせて「受取利息配当金」という科目を使用している場合もありますので確認しておきましょう。

受取配当金の計上方法と仕訳例

受取配当金は収益に計上し、損益計算書(PL)の「営業外収益」に区分する

収益科目である受取配当金は財務諸表上、損益計算書(PL)の「営業外収益」に区分されます。

第四節 営業外収益および営業外費用
(営業外収益の表示方法)
第九十条 営業外収益に属する収益は、受取利息(有価証券利息を除く。)、有価証券利息、受取配当金、有価証券売却益、仕入割引その他の項目の区分に従い、当該収益を示す名称を付した科目をもつて掲記しなければならない。ただし、各収益のうちその金額が営業外収益の総額の百分の十以下のもので一括して表示することが適当であると認められるものについては、当該収益を一括して示す名称を付した科目をもつて掲記することができる。

(引用元)財務諸表等の用語、様式および作成方法に関する規則

受取配当金が生じたときの仕訳例

受取配当金が生じたときの仕訳例についてご紹介します。受取配当金の計上時期については、「配当を受け取ったとき」ですので、自社の口座に入金があったタイミングで仕訳を起票することとなります。

また、受取配当金は、所得税等が源泉徴収された上で入金されます。所得税等については、「租税公課」の勘定科目で処理するのが一般的です。

例:所有するA株式会社(非上場)の配当金は10万円であった。本日、源泉所得税1万円を差し引かれ、9万円が普通預金へ入金された。
普通預金 90,000 / 受取配当金 100,000
租税公課 10,000

受取配当金計上時には源泉所得税額も処理しておく

上記例のとおり、受取配当金として計上する額は、源泉所得税額を加えた「税込の金額

」となります。源泉所得税額は、租税公課や仮払法人税等で処理し、所得税の支払額が認識できるようにしておく必要があります。

これは、受取配当金に伴って生じた源泉所得税額が税金の「前払い」とみなされるためです。確定申告の際には、該当の金額を全額差し引いた上で、残額を納付します。

例の場合は、租税公課10,000円について、確定申告の際に税額から控除されることとなります。

受取配当金を税務処理する際に気をつけたい注意点

受取配当金は計上先が営業外収益だが、法人税法上は「益金不算入」となる

受取配当金は、企業会計上、損益計算書における営業外収益の区分に分類され、収益として認識されます。ただ、法人税法上は益金として計上してはならないもの(益金不算入)とされています。

なぜこのような扱いになっているのか?

益金不算入等の修正が適用される目的は、「課税の公平」を図るといった法人税法の配慮によります。受取配当金が、法人税法上「益金不算入」とされているのは、配当金を支払った法人と、受け取った法人との「二重課税」を回避するという目的があるからです。

そもそも配当を支払う側の企業は、法人税を納税した後に残った利益(繰越利益剰余金)の中から配当を支払います。配当金を受け取った企業が、この金額を益金として認識して、さらに法人税を課税してしまうと、配当支払い法人が計上した利益に対して、重複して課税していることとなってしまいます。

不条理な二重課税を避けるため、受取配当金は「益金不算入」とされているのです。

受取配当金は株式の保有割合によって益金不算入にする割合が異なる

受取配当金を「益金不算入」として処理できる割合は、株式の保有割合によって異なります。これは、企業のグループ経営を阻害しないよう配慮された政策によります。

■受取配当金を「益金不算入」とできる割合

  1. 株式保有割合 100%(完全子法人株式等)…益金不算入割合100%
  2. 株式保有割合 1/3超100%未満(関連法人株式等)…益金不算入割合100%(負債利子控除あり※)
  3. 株式保有割合 5%超1/3以下(その他の株式等)…益金不算入割合50%
  4. 株式保有割合 5%以下(非支配目的株式等)…益金不算入割合20%

※該当事業年度において支払うべき負債に関わる利子がある場合は、配当金の額から、負債利子の金額を控除した金額を益金不算入とします。

受取配当金の益金不算入を実際に計算してみよう

受取配当金の金額を100万円と仮定して、上記の各ケースにおける益金不算入額を実際に計算してみましょう。

ケース①(完全子法人株式等)の場合
100万円×100%=100万円
益金不算入額は100万円

ケース②(関連法人株式等)の場合
※関連法人株式等にかかる負債利子の金額を20万円と仮定
(100万円-20万円)×100%=80万円
益金不算入額は80万円

ケース③(その他の株式等)の場合
100万円×50%=50万円
益金不算入額は50万円

ケース④(非支配目的株式等)の場合
100万円×20%=20万円
益金不算入額は20万円

受取配当金は消費税法上「不課税取引」に該当する

受取配当金は、消費税法上「不課税取引」に該当します。「不課税取引」とは、後述する消費税課税要件を満たさない取引で、課税の「対象外」となる取引です。

なお、消費税が課税されない取引として、「不課税」と「非課税」がありますが、課税売上割合の計算において異なる計算が必要なため、きちんと区別する必要があります。

「不課税取引」とは、課税要件に満たない取引をいう

消費税が課税される取引は、以下の4つの要件をすべて満たすものです。

  1. 国内において行われる取引
  2. 事業者が事業として行う取引
  3. 対価を得て行う取引
  4. 資産の譲渡や貸付け、役務の提供が伴う取引

上記要件にひとつでも該当しない取引の場合は消費税は課税されません。一般的にこのような取引を「不課税取引」といいます。

受取配当金以外の不課税取引の例としては、以下のようなものがあります。

  • 給与・賃金:事業として行う取引ではないため
  • 寄付金:対価を得て行う取引ではないため
  • 保険金および共済金:資産の譲渡等の対価と言えないため

受取配当金に関する疑問を解決|Q&A

受取配当金がいくらか計算するには?

受取配当金の金額を計算するには、配当金の利回りや配当性向について確認する必要があります。

配当利回りとは、購入した株価に対して、1年間で受けることのできる配当の割合を示す数値です。

配当利回り(%)= 1株当たりの年間配当金の合計額 ÷ 1株購入価額× 100

配当性向とは、企業が税引後の当期純利益のうち、どれだけを配当金の支払いに向けたかを示す指標(配当金として株主に還元される割合)です。

配当性向(%)= 1株当たりの配当額 ÷ 1株当たり当期純利益 × 100

配当金が入金になるのはいつ?

配当金の入金時期は、各企業ごとに異なりますが、剰余金からの配当と中間配当について、一般的な入金時期をご紹介します。

剰余金の配当(各期の決算後、株主総会の承認を得て分配される配当)の場合は、決算月の2~3か月後に受取れるケースが多いです。3月末決算の企業の場合は、5〜6月の入金となるケースが多いでしょう。

中間配当とは、一事業年度中の決算期以外に分配される配当です。3月末決算の企業の場合は、9月に中間配当を行うケースが多いです。

株式を所有したら配当金領収書が届いたが、どう仕訳したらよい?

配当金領収証とは、配当金の支払いを受ける権利を表彰する証書または配当金の受領の事実を証するための証書で、通貨代用証券として取り扱われます。この通貨代用証券、会計上は「現金」として取り扱われるのがポイントです。

つまり、配当金領収書が届いた時には、借方に資産科目である「現金」、貸方に収益科目である「受取配当金」として仕訳をします。

(借)現金 xxx / (貸)受取配当金 xxx ・・・(※)

なお、後日銀行で配当金領収証を呈示して配当金を受け取ったときには、既に(※)の仕訳を記帳済みであるため、新たな仕訳は「不要」です。

受取配当金の知識まとめ

以上、受取配当金について解説しました。受取配当金の処理をする時には、受取配当金に該当しない取引(保険の配当金等)ではないかをきちんと見極め、適切な処理をする必要があります。

また、受取配当金は法人税法上「益金不算入」という規定があり、消費税法上は「不課税取引」となります。会計処理、税務処理ともに、思わぬミスが発生するリスクもありますので、本記事を見返し、確実に処理をしていきましょう。

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oneplus編集部

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